スタイリスト岡尾美代子さんの最新刊『雑貨の友』を読みました。
この本を読んで、なぜ私はこれほど岡尾さんの世界観に魅かれるのか
自分の中で少しだけ整理された部分があります。
今日はちょっとドキドキしながら、その辺りについて書いてみたいと思います。
岡尾さんの世界がどこまでも圧倒的に岡尾さんらしいのは
その想像力(あるいは妄想力?)の豊かさにあるのではないかな、と感じるのです。
たとえば旅先のマーケットでふと手にした雑貨に、
一瞬でその雑貨が主人公の物語を頭の中でこしらえてしまうような想像力。
この本に登場する雑貨の物語はどれも、ほのぼのと牧歌的で、ささやかな平和に満ちていて
私は写真に潜む小さな物語の気配を読み取ろうと、思わずじーっと見入ってしまう。
私は岡尾さんのスタイリングだけでなく文章もとても好きなのですが
この本でもとりわけ印象的なのは、岡尾さんは雑貨の"表情"についてとても雄弁で
(お好きだという動物モチーフのものについてはとくに筆が走っている感じ)、
そして語尾の表現や各章の結びの一文の可愛らしさが絶品だということ。
この独特でキュンとくるニュアンスはつくづく岡尾さんだなぁ、といつも感動します。
こんな、ちょっとはにかんだおしゃべりみたいな文章をさらっと書けるのは、
きっと岡尾さんだけだと思う。
福音館書店刊行の『母の友』で5年間も続いた連載をまとめた本で、
岡尾さんがお気に入りの雑貨60個について
自分で撮ったポラロイド写真と短めの読みやすい文章で紹介しています。
ブックデザインを担当されたのは、私たちの著書『Table Talk』でもお世話になった黒田益朗さん。
私が心から尊敬するお二人の作品ということで、襟を正す気持ちで
(でもめくるうちについユルッとしてしまう心地よさがあるのですが)読ませていただきました。
文章、スタイリング、写真、本のたたずまい。すべてにおいて刺激をもらえる一冊でした。
最後に告白すると、岡尾さんがこの「ヨーグルトカップ」のページで想像された通り
私もカップを持ち帰ってしまった一人です。
だって、かわいいですものね。
『雑貨の友』/岡尾美代子 著(筑摩書房 ¥1,470)
必読!ですよ。