現在制作中の新刊は、私が憧れる10人の女性たちを
おしゃれを切り口に取材した人物ルポルタージュです。
雑誌に連載した記事をベースに、10人の女性にあらためて書籍用の取材を行い
全編を書き下ろしているのですが、
その本の核(コア)を自分なりに考えるにあたってふっと頭に浮かんできた、
一つの文章がありました。
それは「美しい50代がふえると、日本は変わると思う。」というコピー。
1997年、私が25歳のとき、たしか実家に帰ったときに新聞を何げなく開いたら
資生堂の50代向けスキンケアラインの全面広告にこのコピーがあって
なんて前向きで、すがすがしくて、勇気が出る言葉なんだろう!と
感動したのを今でも覚えています。
以来、そのコピーはコピーで心に刻まれていたのですが
今回この本をつくるにあたって、
まさにこういう気持ちを自分の真ん中に持ちつづけよう、と最初に決めました。
そうすると、ところでこのコピーはいったい誰が書いたのだろうと気になり、
調べてみたら、著名なコピーライターの岩崎俊一さんによるものだとわかりました。
そこで、東急電鉄発行のフリーペーパー「SALUS」の連載を一冊にまとめたエッセイ集
『大人の迷子たち』と、2009年に発行されていた『幸福を見つめるコピー』という本を
買って読んでみたら、あのコピーも?このコピーも!?とびっくりするほど
私の記憶に残っているさまざまなコピーが岩崎さんが書かれたものだったのです。
伝説的なコピーが生まれた背景や、どんな思いをそこにこめたかといった裏話から
誰の日常にも起こりうる普遍的な話題について書かれたエッセイまで
視点も、言葉の操り方も、核心を突いていてスマートで、
読んでいて本当に気持ちのいい文章でした。
岩崎さんは惜しくも2014年12月にご病気で亡くなられたそうですが
生前残された二冊の著作に、今回まるで導かれるように出会い、
自分の本づくりに取りかかる前に読めたことは、私にとってとても有意義なことでした。
人の心を動かす言葉の力と、その言葉をどのように見つけるのかというヒントについて
この二冊から伝わってくるものが、たしかにあったように思うからです。