読者の方からこんな質問をいただきました。
「聞いてみたいことがあります。奈緒さんとご家族が旅をする、その意味と理由です。
以前からブログでの旅行記をとても興味深く拝見していました。
旅先の選定のセンスの良さ、そこでの肩の力が抜けつつも充実した過ごし方が
とても素敵だなと思っています。
私も小学生の娘二人を持つ働く母ですが、時々家族で海外に行きます。
先日も家族でカンボジアを訪れる機会がありました。
子どもたちははじめての途上国にカルチャーショック、
私も家族の安全と健康を守るのにちょっと疲れたりして
学校を休ませてまで来てよかったのかずっと旅行中も考えていたのですが
うちに帰ってきて、自分の家や自分の住む町が普段と違って見えることに気づきました。
そして、自分の生活や自分自身を俯瞰的に見る視点がほしくて私は旅をするし、
子どもにも子どもなりにその感覚をもってほしいから連れて行くのだ、と思い至りました。
奈緒さんのエッセイで『いつも旅に憧れている』とありましたが、
奈緒さんにとって旅とは何ですか。
また子どもさんには旅でこんなことを感じてほしい、という思いはありますか。
また行き先の見つけ方、旅におけるポリシーなど、
旅にまつわるあれこれをお聞きできたら嬉しいです」
私たちにとって旅とは、なにか......
あまりにも「旅に出たい」という思いが日常化しすぎていて(笑)
きちんと整理して考えたことがありませんでした。
なので、今ぱっと思い浮かぶ限りですが、お答えしますね。
家族旅行に関していえば、部活動の遠征、みたいなものかもしれません。
私は常々、家族を、人生のある時期を一緒に生きる仲間=チームメートだと考えています。
その仲間同士で、支え合ったり、おしえあったり、新しいことに一緒にチャレンジしたり、
ときにケンカしたり、また仲直りして関係を深めたり......しているわけですが、
そういうくりかえしの日々に、時々海外遠征みたいな意味で旅行を差し込むと
いつもとは違う環境の中、チームプレーに変化や成長が自然に生まれるんですよね。
日常生活では忙しさを理由に受け流してしまうようなことが
五感が冴え渡っている旅先では、なんだかすごく気になってケンカになっちゃう。
でもそれだけ真正面から向き合い、さらけ出し、ぶつかることができているわけで、
ケンカはイヤだけれど、まったく無駄なことでもないのです。
そんな苦い記憶も含めて一人一人の心に旅の思い出として刻まれる感じも悪くなくて、
それってそのまま、チームとしてより成長するために遠征に出る、みたいなことに
置き換えられるかもなぁ、と今ふと思いつきではありますが、考えています。
また、旅先については、実はいつもすごくすごく考えて、調べてから決めます。
現在、旅先を選定する第一条件は、まず娘が楽しめないであろう場所は避ける、ということ。
たとえば私たちはいつかシカゴでWILCOのライブを見たいと夢見ていますが
今、毎晩ライブ巡りをしたくなるような場所に出かけても
どちらかは宿に残って娘と留守番しなくてはならないし、
それでは3人で旅する意味がないので、急いで実現させようとは思いません。
せっかく高いお金を払うのだから、家族全員が楽しめる旅にしたいし、
シカゴに限らず、大人だけで行く方が楽しそうな場所は
娘がもっと成長してからの楽しみにとっておこう、と話しています。
旅に子どもの教育的な役割を求めたことはありませんでしたが
家族がひたすら無邪気に楽しく一緒にいられる時期(あと数年だと思います)のうちに
できるだけ思い出をたくさんつくりたい、とはいつも考えています。
いずれ、親のことが大好きなだけの存在ではなくなり、
学校や友だちや将来のことなど、悩みの尽きない年ごろになっても
振り返るだけで心が温まるような、そんな楽しい思い出が残っていることは、
きっと心の強さとなって、子どもや家族を支えてくれるのではないかと思っています。
ちょうど、旅をテーマにした本の計画を温めているところなので、
具体的なことはいずれ出版作品でお伝えできればと思っています。
あぁ、でも質問の答えを書いていたらまた旅に出たくなってきました!
そのためにはがんばって働かないと、ですね。