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May 18,2016

『何度でもオールライトと歌え』

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ようやく腰を据えて次回作の構想を練られる時期になったので、
ちょっとの暇をみつけては書店や図書館をウロウロしています。
そんな中でふと手に取って興味を引かれ、買って読んだ本が
ここ数ヶ月で一番というくらい深く心に残ったので、紹介したいと思います。

『何度でもオールライトと歌え』(ミシマ社)。
ロックバンド、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのヴォーカル&ギターを務める後藤正文氏が
公式サイトに日記として書き綴った文章をもとにしたエッセイ集です。
あるときはミュージシャンとしてツアーに明け暮れるハードな日々を吐露し、
あるときはありふれた日常を送る市民としてふと沸いた小さな疑問に大真面目に向き合い、
あるときは反原発についての主張を自分の言葉をしっかり使って理論的に展開し......

もともと後藤さんのバンドの熱心なファンだったわけではなく
書店でタイトルに惹かれて、パラパラッとページをめくったときに目に入ってきた
言葉の力強さにぐーっと引き込まれるように一気に読んだのですが
本を閉じた後に「いま読みたかったのはこういう文章だった」と感じました。
「こういう文章」とはつまり「潔い文章」のことで、
彼の文章と、書いている内容は、曖昧な逃げ道を自分に用意していなくて
すごく潔くて清々しいのです。
白黒をはっきりさせるのが難しいテーマのときでも
「俺はこう思う」という姿勢を貫いているところに誠実を感じるし、
過去に書いた記事に、もう少し言葉を足して真意を伝えたいというときにも
器用に言い訳したりせず、どこまでも率直で
まっすぐな熱意を言葉に込めているのが伝わってきます。

ブログの記事がベースとはいえ、ちゃんと書籍として言葉を印刷して残す、
その覚悟がしっかり伝わってくる骨太な本でした。
こういうガツンとした読後感のある本はやっぱり好きだし
約200ページに及ぶ紙をめくった後にじわーんと体内に熱が残っているような
この感触こそが本の魅力なんだと再認識させられました。
私もがんばらなくちゃ!という気持ちになっています。

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Author : Nao Ogawa