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Jun 29,2017

自宅で働くことについて

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ブログのテーマへのリクエストを読者の方からいただきました。

「フリーランスで働いている夫は、家だと気持ちが緩んでしまうという理由で
いつも喫茶店を渡り歩いて仕事をしています。
子供がまだ2歳で、部屋を時々覗きに行く邪魔が入るのも難点です。
私としては、自宅に部屋も空いてるので在宅ワークにしてもらいたいのですが......
小川さんご夫婦はどのようにオンオフの気持ちの切り替えをされているのか、
在宅ワークの工夫点について、ぜひブログで取り上げていただけたら嬉しいです」

なかなかむずかしいご質問ですが、
ひとまず率直に答えられるよう努めてみますね。

まず前提として、フリーランスのなかにも
自宅で仕事をするのが好き、もしくは苦ではないひとと
反対にどうしても苦手、あるいは外の方が集中できる、といったタイプのひと、
いろんなひとがいます。

わたしは会社員時代から、電話の音や周囲の声が気になって、
オフィスで仕事(とくに原稿書き)になかなか集中できないタイプでした。
それで朝早く出勤してまだ人が少ない編集部で原稿を書いてみたり、
家に持ち帰って書いたりしていたので、独立してフリーランスになったときは
これからは自宅で堂々と仕事ができると、ある種の解放感を味わったくらいです。

「よく家で仕事ができるね。自分ならダラけちゃって絶対ムリ」などと
これまで友人や仕事仲間に何度も言われましたが、謙遜ではなく、
自宅で仕事ができるひと=エラい、なんてことはけっしてないのです。
先にも書いたように、単なる仕事人としてのタイプの違いであり、
それぞれに長所短所があるのではないでしょうか。

たとえばわたしの場合、オンオフの気持ちの切り替えは、
そんなにちゃんとできていません。
それについては『心地よさのありか』の第四章に収録の「片付かない机」や
ほかのエッセイにも書いているように、いまのわたしの仕事環境では、
どんなに筆が乗っていても、娘が学校から帰ってくれば執筆作業はそこで時間切れ。
仕事は一旦停止して家事や子育てに自動的にシフトせざるを得ないわけで、
そこに「切り替え」などという意識は恥ずかしいくらいに伴っておらず、
仕事の頭を引きずりながら、どこか上の空で子どもと話しているなんてことも......
でも、そんな自分をいまは大目に見ており、まぁ仕方ないさと許容することで
なんとかまわっている(まわってない日もある)のが、わたしの在宅ワークの現状です。
逆に、家ではなかなか仕事ができないというひとは
仕事の時間は仕事だけに集中したい、
プライベートと仕事は切り離したい、という意識がより強いのかもしれません。

質問者の方の旦那さんの職種はわかりませんが、
わたしでも、まだ娘から目が離せない月齢のころは、
子どもを横目で気にしながら原稿を書く、などといった離れ業もできず
保育園に預けている時間に集中してやり、それでも終わらなければ
娘といっしょに夜早く寝て、夜中の3時に目覚ましで起きて
朝までの3、4時間で必死に書き上げる、なんてこともやっていました
(そうした積み重ねで早起きグセがついた部分もあります)。
いまでも本の執筆が佳境に入り、週末も書かないと締め切りに間に合わないときは
夫にお願いして娘を連れて一日出かけてもらったり、
最終手段としては、わたしの実家に泊まりに行ってもらう、なんてこともあります
(逆に夫が忙しいときはわたしも同じことをやって仕事環境づくりに協力します)。

まずは旦那さんはどんな環境がいちばん仕事しやすいタイプなのか、
本人にちゃんと確認してみることが大事だと思います。
本当は自宅で仕事したいのに、
小さい子どもがいて気が散ることがネックだというなら
上記のようなちょっとした対策をあれこれ試してみるのもいいと思いますし、
外の方がはかどるタイプなのであれば、それを尊重するのもひとつかと。

フリーランスのひとがみんな家で仕事をするのが好きとはかぎらないし
(宮藤官九郎さんも原稿はいつもファミレスで書くと何かで読んだことがあります)、
不安や心細さと引き換えに、締め切りを守りさえすれば
仕事する場所や時間を自由に選べるのがフリーランスの特権ともいえます。
自分に合うやり方を知り、なるべくそれに沿って働くことが
本人だけでなく家族にとっても結果的にはしあわせで、
よい仕事につながっていくのかもしれませんね。

*イラストは『心地よさのありか』第四章に収録のエッセイ「高い名刺」の挿画。
在宅ワーカーは、意識して外に出ないと新しい情報やヒントや刺激も得られないので
本屋さんでの息抜きは絶対に必要なもの。
そして、わたしでさえも行き詰まりを感じた時には
「外で働きたい」「家と仕事場を分けたい」と本気で思うことがあります。

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Author : Nao Ogawa