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Jun 27,2017

ヴァージニア・リー・バートンのちいさいおうち

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ヴァージニア・リー・バートンは、僕が絵本に興味を抱くきっかけになった人です。実は子どもの頃に絵本を読んだ記憶はほとんどなく、童話や児童文学を好んで読んでいました。20代後半に友人の原画展を観て、絵本っておもしろそうだと思い始め、あれこれと読んだ中で、いちばん感激した絵本が『ちいさいおうち』でした。

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以前、銀座の教分館ナルニア国で彼女の原画を見たことがありますが、ここまで作品が揃う展示は初めてです。奥さんは仕事のため、娘と2人で。


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絵本以外にテキスタイルデザイナーでもある彼女が手がけた、リノリウム板や原版からプリントされた生地もたくさん展示されています。色や柄など、そのすべての完成度が見事です。

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ちいさいおうちの再現モデルまで展示されています。会場は以前トーヴェ・ヤンソンの展示を観たギャラリーエークワッド。竹中工務店本社の1F スペースにあります。工務店の人もきっと喜んで作ったに違いありません。→ BLOG「トーヴェ・ヤンソンの夏の家」

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僕が彼女の作品を好きな理由は、作家でありながらデザインが素晴らしいところです。距離感のある構図や気持ちよいシンメトリー、細やかで大胆な線のタッチ、それらを見事に作品や絵本の中に盛り込んでいるのです。制作した点数はそれほど多くはないのですが、1冊ごとに注ぎ込まれるデザイナー魂のようなものに、絵本の可能性を感じました。


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今回の展示で胸を打たれたのは、『はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー』のダミー絵本です。僕も絵本のワークショップでダミー絵本をたくさん作りましたが、この完成度には驚きました。


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『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』『名馬キャリコ』『せいめいのれきし』など、彼女の絵本の中でいちばん好きな場面は?と聞かれて迷いなく答えるのは『ちいさいおうち』のこのページです。初めて観る原画に心震えました。(この写真は原画です。絵本と見比べると色の深みの違いがよくわかり面白いですよ)今回の展示が素晴らしいのは撮影がすべてOKなところ。しかも入場無料なのです!


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ヴァージニア・リー・バートンのビジュアルブックには2人の息子を育てながら、絵本やデザインの隅々に至るまで、考え抜き挑戦し、努力し続けた彼女のひたむきな生涯が紹介されています。この本や彼女の一連の作品からを学ぶことはとても多く、自分の原点をきちんと理解するのはいつだって大事なことなんだなと思いました。僕は2時間近くじっくり観ていたので、さすがの娘も待ちくたびれたようですが...。


展示は8月9日まで。印刷物や写真では再現できない原画のパワーと筆圧を至近距離で存分に感じてみてください。→ ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』―時代を超えて生き続けるメッセージ―

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Author : Takahiro Koike