読書の秋ですし、わたしとしては大きな仕事と仕事の狭間でごほうび読書ができる、
そんなうれしい時期なので本の話題を続けます。
原稿や所蔵品を母校の早稲田大学に寄贈すると発表し、またまた話題の村上春樹さん。
近年はカフェゴトーには行っても、母校のキャンパスに立ち寄ることはまずありませんでしたが
氏の施設ができた際には必ずや行くぞという気持ちになっています。
いったいレコードはどれくらいあるのでしょうね??
さて、ファンだと言いつつ『騎士団長殺し』に取りかかるのが
発売から一年以上も経ち今年になってしまったわたしですが、
久しぶりにあのめくるめく長編小説世界に酔いしれ、
これでようやくこっちも読めるわ、と手を伸ばしたのが『みみずくは黄昏に飛びたつ』。
少女時代から村上春樹作品の愛読者である作家の川上未映子さんが
計11時間、文字にして25万字にも及ぶ超ロングインタビューを行い、
その濃密な二人の対話をまとめた本です。
330ページ以上もある本で、ようやく読み終わったときには
「なんかすっごいの読んじゃった......」と半ば放心状態に。
いやはや......このインタビューのために川上さんが準備をしたその労力と時間、
おまけに緊張を考えたら、途方に暮れるしかないって感じです。
どれくらいすごいかというと、過去の村上作品の登場人物の名前やキャラクター、
その人物がとった行動や語ったセリフがすべて頭に入って整理されていて
(そして村上さん本人はたいてい忘れている)、
そのうえで実に心憎い、深い質問で村上さんの素顔に迫るのです。
そんな彼女の気迫のおかげか、長いのに退屈する暇もなく
(それは村上さんも同じだったそうです)、むしろページが進むに連れて
わたしもどんどん井戸の奥へと潜っていくような感覚にさせられるのでした。
「作家同士の対談は好きじゃないけれどインタビューならば」と
企画を引き受けたという村上春樹さんも、
川上さんの質問の鋭さと緻密さ、粘り強さにとても感心している様子が
言葉の端々から伺えました。
わたしもときにはインタビューの仕事をする身として、
「事前に調べられることはできるだけ調べ、相手に誠意を持って訊ね、
本人も自覚していなかったような感覚を、よい言葉で引き出す」という姿勢を
忘れないようにしようと思いました。