Dec 17,2018

『有元葉子 私の住まい考』

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現在の読書は、仕事の資料であり趣味でもあるテーマの「家づくり」関連を
次から次へと読みつないでいるところです。
そのなかでまたもや素晴らしい内容で、ずっと感動の余韻に浸っているのが
『有元葉子 私の住まい考 家と暮らしのこと』(平凡社)

『おしゃれと人生。』でファッションを切り口に
インタビューさせていただいたことがある有元葉子さんですが、
当時取材をさせていただいたアトリエは、その美意識が隅々まで貫かれた
ため息の出るほど洗練された空間でした。
『私の住まい考』では、そのアトリエをはじめ、黒姫の山の中に建てた休日用の家、
初めてご自分で購入したというイタリアの元修道院の家という3つの家について
その物件との出会いのストーリー、設計や家具選びでこだわったこと、
その家で過ごす時間が自分の人生をどのように豊かに彩ってくれるかということが
ていねいに語られています。

とくに感動するのは、有元さんの「好き」と「好きではない」、「必要」と「不要」、
「気持ちいい」と「落ち着かない」といった感覚の研ぎ澄まされ方です。
自らの感覚にとても敏感でいられるからこそ、何を決めるにしても曖昧さや妥協がなく、
その結果として、これほど芯から満たされる家が実現できたことが
この本を読んでいるとよくわかります。

なかでも印象的だったのは、娘さんたちにも内緒で決めてしまったという
イタリアに家を持つことになったときの話。
「私には以前から感じていたことがあります。人間は誰にも自分の居場所があって、
ただその場所に立つだけで直感でそれがわかる、っていうこと。
それは日本国内かもしれないし、外国のまだ訪れたこともない場所かもしれないーー。」

そんな有元さんが、たまたまフランス旅行の際に初めてイタリアにも足を踏み入れ、
人に勧められたレストランを目指してウンブリア地方まで足を伸ばすと、
その地で車から降りた瞬間に「ここに住もう」と思った、というのです。
それから1年間かけて家を探し、購入後さらに1年間かけてリノベーションを行ったその家が
表紙の写真にもなっているのですが、その美しさにうっとりするだけでなく、
なんというか「家や暮らしってこれくらいに『自分の感覚がすべて』という姿勢を貫けば
きっと大きく間違えることはないんじゃないか」という学びが、この本にはあります。

わたしの家づくりは来年また(自分たちにとっては)大きな局面を迎える予定ですが
プランニングなどでちょっと迷いそうになったら、
この本を読み返して大事なことを見失わないようにしよう。
そんなふうに思った一冊でした。

『有元葉子 私の住まい考 家と暮らしのこと』(平凡社)

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Author : Nao Ogawa