本や雑誌の編集という仕事は業務が多岐に渡るため
同業者の友人と「どの工程が好きか、嫌いか」といった話題で盛り上がることがあります。
「撮影が大好きで原稿を書くのは嫌い」という人もいれば
「予算組みや経費精算などお金のやりくりが実は楽しい」という人もいて
みな同じような仕事をしていても胸のうちはそれぞれで、けっこう面白いのです。
私は、原稿を書くことと、最初にコンテを描く作業が好きです。
コンテというのはページの設計図のようなもので、
スタッフ全員それを見ながら制作を進行していく、大切なもの。
編集者になったばかりの頃は、このコンテを描くという作業があまり好きではなくて
申し訳程度にザクザクッと描いて、あとは成り行きに任せるようなところがあった気がします。
当時作っていた雑誌の性格もあり、
最初からイメージを固めない方が面白いものができると考えていた部分もあったのです。
でも今は、最初にある程度きっちり描き込むことが多くなりました。
不思議なことに、素人のお絵描きみたいなコンテでも
頭の中に明確なイメージを持ちながら描くと、それが手から鉛筆、そして紙へと伝わるのか
ページの全体像や目指す着地点などが自ずと見えてくるようなコンテに仕上がります。
仕事が終わってみると、そのコンテ通りになっていることもあるし
途中でスタッフと相談して流れが変わっている場合もあるけれど
いずれにしても最初に細かいコンテがあると
その後の進行が自然にそれを「深める」方向へと向かう気がして
最初にベースを作った身として毎回そのライブ感にワクワクすることができるのです。
真っ白なコンテ用紙をにらみながらあれこれ考えをめぐらせるのは
妄想好きにとってはかなり楽しい、いわば「イメージ作業」。
私が文章を書くことだけでなく、編集という仕事を続けているのは
このコンテ描きという作業が好きだからなのかなと思うことがあります。