
著書『Table Talk』の読者の方から「あの話が好きだった」と感想をいただく中で
実感として人気が高いのは「写真立て効果」「美しく古びていくもの」
そして「パンツ交換」でしょうか。
とくに「パンツ交換」はタイトルでまずびっくりして
読んでみたらちょっと笑える内容で印象的だった、と言って下さる方が多いのですが
つまりは私と夫がときどきお互いのデニムやチノパンを交換するという話です。
これまで何本も交換してきましたが、その中に、もはや自分が履いていた記憶すら薄れて
完全に夫の肌の一部と化しているパタゴニアのフリースパンツがあります。
たしか私が寒い季節のヨガやウォーキングのために買ったものでしたが
結婚したばかりの頃、家の寒さ(そう、前の家も寒かったのです)で風邪を引いた夫に
貸してあげたが最後、もう二度と戻ってきません。
洗濯に出すたびに「夕方までに乾かなかったらどうしよう」と不安になるらしく
ほとんど(スヌーピーの仲間の)ライナスの安心毛布のような存在。
あまりに毎日履きすぎて、もとはフリースだったとは信じられないほど
生地は薄くヨレヨレで、今ではどこかに穴があくのも時間の問題という状態です。
「これに代わるパンツを見つけないことにはもう不安で不安で」と
本当に不安そうな顔をする夫を傍観しながら
このパンツもこんなに愛してもらえば本望だろうなと思い
交換というよりほとんど奪われた事実にも目をつぶろうじゃないかという気になっています。
