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Oct 12,2016

『強父論』

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今年夏に出版された、阿川佐和子さんの『強父論』を、
大笑いしながら、そして不意に涙があふれてちょっと慌てたりしながら、読み終えました。
あまりに面白くて、週末の夜「明日はちょっと寝坊しようか」と話しながら寝たというのに
翌朝は続きを読みたくて結局早起きして、朝5時から布団の中で読みはじめてしまうほど。
そして7時過ぎ、そろそろ家族が起き始める時間に
「あぁ、おもしろかったぁ〜」と満足感いっぱいで本を閉じたのでした。

阿川佐和子さんの著書はベストセラーの『聞く力』(→BLOG )以来でしたが
その持ち味である、さっぱりとした歯切れのいい文章は読んでいて本当に気持ちがいいです。
よくエッセイや対談などで語られているさまざまなエピソードのなかでも
とくにお父さまにまつわる話は絶品で以前から大好きだったのですが
この本は、そのお父さまで昨年亡くなられた阿川弘之さんの思い出ばかりを綴ったもの。
といっても故人を偲ぶしめっぽさとは無縁で
どこまでもカラリと明るいムードに貫かれています。

生前から、自分が死んだ後に出版社から父親のことを書いてほしいと依頼がきても
故人を讃えるような本だけは出すなと、お父さまからクギを刺されていたという佐和子さん。
その遺志に逆らうことになく、わがままで人間味あふれるお父さまの強烈なキャラクターを
ユーモアたっぷりの筆致で書き、エンターテインメントとして見事に昇華させています。
読んでいるうちに、九州男児で亭主関白な私の父がまだまだかわいいレベルに思えてきたので
さっそく母に貸し出す約束をしました。
その次は父本人に手渡され、次は姉へと回って行くことでしょう。
それで読んだ人同士で「あそこの話、おもしろかったよねぇ」
「ああいうとこ、パパと同じだよねぇ」なんて言い合って、ゲラゲラ笑い合いたい。
そんなどこまでも楽しい、でもかすかにじわっと温かい思いが胸に残る、よき一冊でした。

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Author : Nao Ogawa