最近、古本屋さんで手に入れた函付きの本たちです。
これは埼玉県にある〈senkiya〉(→ BLOG )の2階にある古本屋さん〈suiran〉で買った
ケストナーの『サーカスの小びと』。絵も装幀もあまりに可愛くて、
児童文学ですが純粋に私自身の買い物として購入しました。
背の部分はクロス張りになっていて、
生地の端を目盛りが刻まれたテープで留めたみたいなデザインです。
タイトルの書体を、本と函とで変えてあるのは
書店の本棚で目立つようにという意図からでしょうか。
でも本の書体の方がユーモアがあって私は好きです。
これは〈フリッツ・アートセンター〉(→ BLOG )で手に入れた
『カンガルー日和』の単行本、しかも初版です!
函付きなのに、本は並製(ソフトカバー)というハズし具合や
正方形に近い版型にも遊び心を感じます。
文字の組み方にもゆとりがあって、当然ですが佐々木マキさんのイラストも大きいし
文庫で読むのとはずいぶん印象が違います。あぁ、これが手に入れられてうれしい...
こちらは〈ひるねこBOOKS〉(→ BLOG )で購入した幸田文さんの随筆集。
落ち着いた大人の着物を彷彿とさせる装幀が、文章の個性と重なっていて素敵です。
平成5年の初版本ということはそれほど古い本ではないのに
抑制の利いた中にも風格を感じるデザインは
いま見ると新鮮で、本の美しさを再認識させてくれます。
函付きの本にいまもこれほど心が躍るのは、
こどもの頃の読書体験によるところが大きいような気がします。
中でも記憶に強く残っているのはこちら、『長くつ下のピッピ』。
児童文学はとくに、最近では主流のソフトカバー版より、
できるだけハードカバーで読みたい派、しかも函付きなら尚よし、です。
大人になってから、新刊で買った函付きの本でとくに好きなのはこのシリーズです。
どれも私が30歳くらい、13、14年前に買ったもの。
最近の『とと姉ちゃん』フィーバー(どちらかといえば私は寅さんよりこちら)で
久しぶりに本棚から出してきて、あらためて花森安治さんの絵や文字やデザイン、
大橋鎮子さんのおだやかで品のある文章の魅力を再確認しています。
本や書店の在りかたが大きく変化しているいま、
ならば自分はどんな本をつくり売っていきたいのかということをずっと考えていますが
こうして「持っていることそれじたいが心を満たしてくれる本」というものを
実際に自分の手にとってみることで
悩みの雲の中に、ひと筋の光が差すような気がします。
函付きという仕様には、いま同じことができるかどうかはさておき、
つくり手の「この本を大切に売り、買ってくれた人にも大切に持っていてほしい」という
思いがこめられているような気がして、
そこにいまの私は希望とヒントを見出そうとしているのかもしれません。