名古屋にお住いの読者の方から息子さんの20歳の誕生日祝いに、記憶に残る風景をイラストにというオーダーをいただきました。
小学生の頃に息子さんがお父さんと2人で、天白川を下り名古屋港までサイクリングをしたそうです。初めての遠出で緊張もあったせいか、息子さんは途中で転倒し足をケガしてしまいます。たまたま近くで農作業をしていた老夫婦に水道を貸してもらい、手当をしてもらったことが、今でも息子さんの良き思い出として残っているそう。
遠くに見えるのが名古屋港のポートビル(僕も中学生時代に行ったことがあります)。川沿いには犬と釣り人、川面で鳥たちが気持ちよさそうにプカプカ泳いでいます。
お父様は僕と同世代の高校の先生。息子さんは生後間もなく大病を患いますが奇跡的に回復し、現在は保育士を目指して勉強中。依頼してくださったお母様は、ちょうど3年前、娘さんの成人式にイラストを制作した方で、一緒に並べて家族写真と共に飾りたいというご希望でした。
→ BLOG「成人祝いのオーダーイラスト」
2台の自転車の程よい距離感とゆるやかに輝く轍(わだち)に、親子のこれまでとこれから独り立ちする息子さんへエールを込めました。
実は僕も小学生の頃に父とよく川沿いの土手を走っていました。父の趣味は朝のジョギングで、僕らが学校に向かう時間帯に合わせて、学校方面から通学路をわざわざ逆走して、「おはよう、おはよう!」(おはようおじさんと呼ばれていました)とすれ違うみんなとハイタッチをしていました。「小池の父さんが来たぞ~」と誰かが言うと、前方からタッタッタッと走ってくるキャップにランニング姿の父と目が合い、(みんなの手前もあり)ちょっと恥ずかしいけれど、誇らしい気分だったことをこの絵を描きながら鮮明に思い出しました。
「夫の帰宅を待って家族で開封しました。夫はもちろん息子も喜んでいます。イラストを囲んで当時の思い出に2人で花を咲かせていました。息子の病名が告げられた日、お医者さまからは10歳の誕生日は迎えられないかもしれない、と言われました。こうして無事に20歳を迎えることができ、あらためて幸せと感謝を感じています。良い記念になるイラストをありがとうございました」
写真のない記憶を絵にするのはなかなかたいへんな作業でしたが、こんなにも喜んでいただけたら、僕もうれしい...。それでは、良き思い出に花が咲くような素敵な週末を。